焼肉店とHACCP

調理中の食品が、まな板や調理器具類、あるいは調理する人の手を介して食中毒菌やウィルスに汚染されること。その結果、元々食中毒菌に汚染されていなかった食品が汚染される。

特徴

10~100個程度の少量の菌で食中毒を起こす感染型の食中毒菌。
ベロ毒素を産出し、出血性腸炎、消化管合併症、溶血性尿毒症症候群などの重篤な症状を引き起こす。
O157が代表的だが、O26、O111、O103など他の血清型も存在する。

原因食品

汚染された肉や内臓肉。
二次汚染されたあらゆる食品。

食品への汚染経路

牛や羊などの糞便からの汚染。
感染しているものの自覚症状のない（不顕性感染）調理従事者による汚染。
汚染された食肉類から、他の食品や調理器具への二次汚染。

症状

発症までの潜伏期間平均4日から8日
出血性腸炎となって激しい腹痛、水溶性下痢、潜血便を引き起こす。
消化管合併症や溶血性尿毒症症候群により肝機能障害、中枢神経障害を起こし、死亡することがある。

対策

食肉の加工は中心部75度 1分以上の加熱を行う。
ドリップや調理器具、人を介しての二次汚染・交差汚染の防止。
肉と野菜の調理場所に距離を取り物理的な接触を避ける。
肉専用のまな板等を用意し、使用後はすぐに洗浄、消毒を行う。
十分な手洗いを行う。

特徴

500個程度の少量の菌で食中毒を起こす感染型の食中毒菌。
酸素の薄い状態を好む微好気性菌。常温で空気にされされた状態では徐々に死滅する。
乾燥に弱い。

原因食品

鳥刺しなどの生、加熱不足の鶏肉。
鳥類、家畜の糞などの汚染を受けた沢水、井戸水。

食品への汚染経路

食肉加工工程における家畜、家禽などの糞による汚染。
調理工程における人の指、調理器具などを介した食品への二次感染。

症状

発症までの潜伏期間およそ2~7日
発熱（38度以下）、頭痛、倦怠感、吐き気、腹痛、下痢
ギラン・バレー症候群を発症する場合がある。

※ギラン・バレー症候群
手足の痺れから四肢の麻痺、呼吸筋麻痺、脳神経麻痺などを起こし、15~20%が重症化し、死亡率は2〜３%。米国の統計ではカンピロバクターの感染者の10〜30%がギラン・バレー症候群を起こしているとも推察されている。

対策

中心部75度 1分以上の加熱。
ドリップによる汚染の防止。
肉専用のまな板等を用意し、使用後はすぐに洗浄、消毒を行う。
十分な手洗いを行う。

特徴

乳幼児や高齢者では100個程度でも食中毒を起こすこともある感染型食中毒菌。
乾燥や低温に強く、10度以下の冷蔵状態でも長期間生き残る。

原因食品

鶏肉、牛肉、鶏卵、鶉卵、爬虫類（スッポン料理）など。
卵焼き、半熟オムレツなど、加熱の不十分な食品。

食品への汚染経路

食肉加工工程での動物の朝刊内から食肉への移行
調理工程における人の指、調理器具などを介した食品への二次感染。

症状

発症までの潜伏期間およそ6~72時間
腹痛、下痢、発熱（38度〜40度）、頭痛、嘔吐、倦怠感
死亡例もある
慢性的な保菌者となることもある。

対策

75度1分以上または61度15分以上の加熱を行う。
食肉や卵などは分別して冷蔵保管し、なるべく早く消費する。
卵の割卵後は、同一容器に割置きせず直ちに使用する。
使用した調理器具類は、十分な洗浄、殺菌を行う。

特徴

ヒトの腸管内でのみ増殖し、調理従事者から食品が汚染されて発生する事例が多い。
ごく少量のウィルスで食中毒を起こす。

原因食品

カキ、アサリ、シジミなどの二枚貝。
二次汚染を受けたあらゆる食品。

食品への汚染経路

調理従事者の手指からの汚染。
汚染された食材を調理した調理器具からの汚染。
糞便、嘔吐物からの接触感染、経口感染、飛沫感染など。

症状

発症までの潜伏期間およそ12〜72時間
嘔吐、下痢、腹痛、発熱（38度以下）
感染しても症状が出ない不顕性感染の場合があるが、発症者と同様にウィルスは腸管内で増殖する。

対策

調理従事者は普段から二枚貝の生食を避ける。
十分な手洗いを行う。
中心部を85℃～90℃で90秒間以上の加熱を行う。
嘔吐物などの処理の際には、手袋、マスクなど十分な感染予防対策を行い、500~1,000mg/lの次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用する。