一般衛生管理(前提条件プログラム、PRP)
一般衛生管理が今までもやっていたような基本的な衛生管理だということはなんとなくわかったんだけど、HACCPを導入するにあたって今まで通りやるだけでいいのかな?一般衛生管理といってもなんだか色々あるみたいだし、どんなことをやればいいのか良くわからないよ。
一般衛生管理の代表的なものとしては
- 施設の衛生管理
- 食品取扱設備等の衛生管理
- 使用水等の衛生管理
- そ族及び昆虫対策
- 廃棄物及び排水の取り扱い
- 回収・廃棄
- 食品取扱者等の衛生管理
- 食品取扱者等に対する教育訓練
こういったものが挙げられるけれど、一般衛生管理においては、いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)をイメージすると分かりやすいと思うよ。そして大事なことは、これらの管理について、誰でも同じように管理できるようにすることだよ。そのために手順書を作ってみよう。これもHACCPの「見える化」のひとつといえるね。
一般衛生管理は、HACCPを有効に機能させる前提として、潜在的な危害要因による汚染や混入、増大を防止することを目的とします。そのため前提条件プログラム(PRP:Prerequisite Programs)とも呼ばれます。
いわば基礎的な衛生環境となる部分ですから、常に一定の衛生環境が確保されるような仕組みでなければなりません。そのためには、管理・作業が、誰でも、同じように、正しく実施できることが大切です。そこで、この管理・作業手順の内容を考えて書面化します。
この作業手順として書面化、標準化されたものは、標準作業手順(SOP:Standard Operating Procedure)や衛生標準作業手順(SSOP:Sanitation Standard Operating Procedure)と呼ばれます。
標準作業手順を考えるにあたって決めておくべきポイントは次のようなものです。
- 作業の目的と注意点
- 具体的な方法(概要と詳細)
- 作業頻度
- 達成成績の基準とその確認方法
- 不十分な場合の是正措置の方法
- 実施担当者
- 実施状況の記録方法
- 責任者によるチェック方法
- 記録の検証
一般衛生管理のハード面とソフト面
施設・設備の衛生管理といったものはどうしてもハード面に依存する部分が大きく、事業の開始、設計段階で十分に考慮しておくべき衛生管理といえます。例えば、食品を汚染する可能性がある産業が近くにないか、浸水が想定される地域ではないかといった立地の問題や、建物や使用する機器・装置が、メンテナンスや清掃作業が容易な構造、レイアウトとなっているかといった点です。
もっとも多くの方が既に事業を開始している段階でしょうから、今からこれらへの直接的な対応を行うことはなかなかに困難です。そこで、ソフト面(運用)での衛生管理を併せて検討します。標準作業手順の策定はこのソフト面での衛生管理を確実、徹底するために重要なポイントです。
一般衛生管理と5S
一般衛生管理は食品の安全性を確保するための前提となる事項ですから、いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)に基づく衛生管理と共通します。そのため標準作業手順を作成するにあたっては、5Sを意識しながら検討してみてください。
項目 | 活動内容 |
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整理(せいり) | いらないものを撤去する。 |
整頓(せいとん) | 置く場所を決め、管理する。 |
清掃(せいそう) | 汚れがない状況にする。 |
清潔(せいけつ) | 整理、整頓、清掃ができていて、きれいな状態に保つ。 |
習慣(しゅうかん) | ルールを伝え、ルール通りに実施することを日常化させる。 |
※習慣は躾(しつけ)とされる場合もあります。
手順書作成にあたっての視点
事業所、店舗は様々でまたそこで働いている人たちもまた様々です。そのような環境の中、誰もが同じように、正しく一般衛生管理が行えるような手順書を作成するにあたっては、「いつ、どこで、誰が、何を、どのようにすべきか」といった項目をわかりやすくまとめておく必要があります。
- 作業内容は目的に沿ったものであること
- 実行可能であること
- できるだけ具体的で、実施する者によって解釈が異ならないこと
- 科学的、技術的に裏付けられていること
- 誰もが順守できること
- 現場の意見を取り入れ、実情に即していること
- 作業の手順を盛り込んでいること
- 責任と権限が明確にされていること
- みやすく使いやすいこと
手順書に基づく衛生管理の実施
適切な手順書が作成されても、実際に実施されなければ意味がありません。そこで実施にあたっては次のような点に注意します。
- 決められた手順通り確実に実施したことを記録する
- 作業の出来栄えを目視検査または試験検査により確認し、その結果を記録する
- 出来栄えに問題があれば修正し、その内容を記録する
- 作業の手順に問題があれば、問題箇所を修正し手順書を改める
- 従業員等、実施者に一般衛生管理、記録の維持保管についての教育訓練を行う
HACCPの前提ではありますが、一般衛生管理もHACCPの一部です。そこで、一般衛生管理の実施の記録をとることは、HACCPの目的の一つである衛生管理の「見える化」として重要です。手順書の作成とともに、実施の記録を作成し保管します。